私は県議会自民党を代表して質疑に立ち、再稼働を容認する知事の判断に賛同するとして、質疑や意見を述べたが、その中で言及した「攻撃されたのは原子力発電所の関連施設で、原子炉本体への攻撃はされていない」との発言が、後日、「危機感を訴える議員もいたが、原発は占拠されただけとの楽観論もあった」との新聞報道を目にした。
私は今回の原発攻撃を楽観的に見ているわけではなく、単に現実論を言っただけである。仮にロシア軍が原発を破壊する意図があれば、それなりのミサイルで攻撃すれば済む話で、原発が攻撃対象になったというヒステリック一辺倒の論調に疑問を投げかけただけである。
仮に原発に直接攻撃がされたら、運転していようがいまいが被害は甚大で、偏西風に乗ってロシア全土に拡散されることぐらい、常軌を逸したプーチン大統領でも分かることだろう。
下記が全員協議会の質疑の原稿である。
議員全員協議会(3月24日)質問 野阪道明
私も、原子力規制委員会が世界で最も厳しい新規制基準に適合すると認め、更には判断するにあたって、知事が極めて重要とされたUPZに立地する米子市及び境港市が再稼働を容認すると判断された以上、それらの判断を重く受け止め、県として島根原発2号機の再稼働を認めるという知事の意見に対して賛同するものであります。
その上で何点かお尋ねしたいと思います。初めに、今般のロシアによるウクライナ侵攻の中で、ロシア軍はジュネーブ条約で禁止されている原子力施設への攻撃を実行し、先ず、廃炉措置が進むチェルノブイリ原発を占拠、続いて欧州最大規模のザポリージャ原発を攻撃制圧しました。
また、第2の都市ハリコフにある原子力研究施設を攻撃し、建屋の損傷などの被害が出ていますが、何れも関連施設が対象で原子炉本体に対する攻撃はしておらず、原発の破壊が軍事目的に無いことが推察されます。
この度の事態を受けて、原発に対する武力攻撃への対応が国会において議論され、同様に本県議会でも議論されていますが、そもそも平時と有事の対応は全く違う次元のものであり、きちんと区別して議論するべきだと考えます。
仮に有事となった場合、核を含む生物化学兵器などの大量破壊兵器や、その輸送手段である弾道ミサイルの存在が原発以上に大きな脅威となるのは明白であり、隣国にそれらを保有するロシア、中国、北朝鮮を抱える我が国においては尚更であります。
国会では、福井県警の原発専従部隊の横展開といった話も議論されていますが、あくまでそれは平時におけるテロ対策等の強化であり、他国による武力攻撃といった事態に対しては、国の安全保障上の観点から対処されるべき問題だと考えます。
このような観点から、民間企業である中国電力に対して、武力攻撃への対策を求めるのは真に県民が求める議論にはなり得ないと考えますが、付帯条件の一つにある「武力攻撃に対する最新の知見を安全対策に反映」というのは、どういうことを想定されているのか、お尋ねします。
一方、東日本で22日に起きた電力需給の逼迫で政府による初の警報が出され、電力の安定供給が大きな課題となっています。安定供給の観点から見ると、原発の多くが停止している現状において、主に火力発電が代替を担っていますが,脱炭素に向けた国際的な動きの中で,CO2の排出量が比較的少ないLNGの需要が増加しており,価格も高止まり傾向にあります。
そして今般ウクライナ侵攻が勃発し,ロシアがヨーロッパへの天然ガス供給を停止する可能性があると報道されており,今後,国際的な需給ひっ迫がさらに進めば,国内におけるLNG確保が危うくなる可能性もあります。
資源の乏しい我が国においては,近年の混とんとした国際情勢の中で,いつエネルギーの安全保障が揺らぐか判らない状態であり,様々な状況の変化にも耐えうるエネルギー構造の確立が極めて重要だと思います。
そのような観点から,特定の電源に偏ることなく,火力,水力,再エネ,そして原子力を含めた「エネルギーミックス」が重要になると考えており、とりわけ,原子力は供給安定性,経済性,そして環境性にも優れた電源であり,その重要性はますます高まっています。
アメリカでは,より安全性を高めた次世代新型炉の開発を進めており、フランスは,福島第一原発の事故を踏まえ,14基を閉鎖し原発依存度を下げるとしていましたが、これを撤回して2050年までに国内に原子炉6基を新規建設すると発表しています。
さらに,脱原発を宣言したドイツでさえも,昨今のウクライナ情勢の悪化を受け,エネルギーの安全保障の観点から特定の国に依存することに危機感を表明しており,今後,原発回帰へ転換する可能性も指摘されています。
このように,世界的な趨勢をみると,エネルギーの安全保障や脱炭素の観点から原発回帰の動きが加速しているのは紛れもない事実であります。
言うまでも無くエネルギーの安定確保は,国の生命線であり、中海圏域の経済団体からの陳情趣旨にもあったように、資源の乏しい我が国においては,脱炭素や国際情勢など様々な要因により,国民生活や経済活動に影響が出ないよう,エネルギーの安全保障に万全を期す必要があると考えます。
以上のことを鑑みると,安全を前提に原子力の早期再稼働は,我々がとり得る極めて重要な選択肢だと考えますが、知事の所見を伺います。
先ほどの質疑の中で、まだ議論が足りない、判断するのは時期尚早といった意見もありましたが、島根原発2号機の問題に関しては、平成25年12月に中国電力からの新規制基準適合性審査の申請に係る事前報告に対して、最終的な意見は留保すると回答して以降、8年超の間、審査状況を逐一常任委員会で報告を受け、適宜、全員協議会も開催し、本会議においても数多くの議論がなされてきました。
そして、最終的な意見は原子力規制委員会及び中国電力から説明を受けた後、県議会や米子市、境港市の意見を聞いた上で提出するとしており、このたび地元の米子市と境港市が判断をされたわけです。
さらに、本日正にこの議場において、中海・宍道湖・大山ブロック経済協議会からの早期再稼働を求める陳情が採択され、2号機の再稼働に対して県議会の判断が出されたわけであります。
島根県側においても、松江市が2月に判断、安来市も昨日判断されました。出雲市、雲南市も議論の最中ですが、まもなく判断されると思います。島根県は昨年12月に本県との覚書に基づき、本県の考えを伺いたいと依頼されており、関係自治体の判断が出揃うのを待っている状態です。
このようにあらゆる条件が出揃った中で、8年以上に渡り議論してきた問題について、まだ議論が足りない、時期尚早というのは、苦労を重ねながら苦渋の決断をされてきた立地自治体や関係自治体に対し、極めて無責任だと言われても仕方ないのでは無いでしょうか。
なお、本日、我が会派からは4人が意見を述べさせていただきましたが、我々が県議会自由民主党を代表して発言していることを重く受け止めていただくようお願いしたいと思います。