2010年12月

公会堂の陳情採択に一言

議会は陳情の継続審査と可決に二分されたが、結果的に陳情採択が上回り、私たちが主張した継続審査は否決された。 この度の陳情採択が公会堂の今後に意味するものは何なのか、私の意見を以下に述べたい。

今現在、当局が示している公会堂耐震改修の基本的な方針は、必要最小限の改修費に抑えるとし、文化財的価値を損なうような改修案が示されている。 この点に関して討論に立った賛成議員からは、当局と同じく必要最小限に止めるべきと言う意見や、逆に文化財的価値を損なわない改修にすべきと言う意見に分かれていた。

当局が言う必要最小限の意味は具体的に何か、当局は明快な答弁を避けているが、文化財的価値より改修費を抑える事を優先し、単なるハコとして公会堂を存続させると言った方が解りやすい。 公会堂の調査報告書では、文化財的価値に多くの紙面を割いているが、初から全ての判断に事業費削減が優先するならば、税金の無駄使いに過ぎない。

以上を踏まえ、今の段階での陳情採択は、当局に対し議会としてどの様なメッセージを送った事になるのだろうか。 それは言うまでも無く、現在示している改修方針に対し肯定する事に他ならない。

当局は公会堂の耐震設計予算を、23年度当初予算に盛り込むとし、今正にその予算の編成中である。 従って、今現在の耐震改修の当局方針で予算計上すると言うことであり、文化財的価値を損なわない検討など物理的に無理な話である。  

陳情を採択する事は、この当局の方針を後押しする事になるのは、誰が考えても明白であろう。 陳情者や多くの団体が求めている公会堂の文化財的価値の継承は、議会の陳情採択によって掻き消された感があるが、主戦場は23年度当初予算の攻防とし、準備を進める事としたい。 

12月定例会が閉会

12月定例会の大きな議題は、やはり図書館・美術館整備事業の執行保留に関して、早期の事業着手をを理由に上程された債務負担行為や公会堂の存続と早期改修を求める陳情の審査だったと思う。 図書館・美術館整備事業予算の債務負担行為に関しては以前に詳しく述べたので、今回は公会堂問題に関して私の意見を述べたい。

継続審査となっている公会堂の陳情に対して、当局の存続方針が示されたのを了として、陳情を採択すべきとの意見が過半数を占め陳情は採択された。 私を含め会派の8人と公明党の4人、1人会派の合計13人は継続審査を訴えたが、15対13で否決された。 

我々13名は公会堂の存続方針の中身が不明確な現状において、公会堂の陳情に対し議員として責任ある結論が出せないとの立場から,議場を退席し賛否には加わらない事とした。

継続審査の賛成討論には、遠藤議員(1人会派)が財源に関して、竹内議員(蒼生会)が公会堂存続の政策判断に関して、そして私が耐震改修の方針に関して、それぞれ現在示されている当局方針の不明確な点や矛盾点について指摘した。

以下が私の討論内容です

米子市公会堂の存続と早期改修を求める陳情について、継続を主張し討論いたします。
本陳情では、公会堂は公共建築百選にも選定された文化財的価値の高いホールであり、市民が守るべき貴重な財産としています。 

また改修に当たっては、市民や文化団体、建築の専門家の意見を尊重するように求めていますが、市長は出来るだけ意匠には配慮するものの、最低限の改修費に抑える旨の答弁に終始しており、改修に対する基本的な考え方が極めて不明確であります。

また、報告書によると、文化財的価値では、現時点で国の重要文化財指定には否定的ですが、登録有形文化財の指定は可能とし、建築史的価値は高いと評価していますが、今の補強計画ではホール正面に耐震壁が必要となり、意匠的には問題があります。

更に避難所施設とすれば、ホール棟両側面のタイル張り部の影響等より深刻でありますが、当局によると工事費が1億円程度増加するものの、国の社会資本整備総合交付金が当てられるため、最終的な一般財源の負担が7100万円から6300万円に軽減されるとし、ことさら費用面の有利性を述べています。

文化財的価値には消極的で、改修費の削減には積極的な当局の姿勢が見え隠れいたします。 費用対効果の効果部分の検討はこれからだとの答弁もありましたが、これではいったい何の為に多額の費用をかけて公会堂を存続させるのか、活性化に繋げる為の一貫した意思が感じられず、理念なき改修と言われても仕方ありません。

存続後の価値を損なわない為にも特に外観は守るべきであり、耐震補強の設計時には、文化庁とも充分に協議して、「市民の守らねばならない貴重な財産」とした本陳情の趣旨を踏まえた補強計画にするべきだと考えます。

公会堂の存続はそれ自体が目的では無く、存続させることで如何に今後の活性化に繋げるかが真の目的であります。 多額な改修費を掛ける以上、それに見合う効果や付加価値が求められており、文化財的価値を損なわない点は、改修の重要な部分だと考えます。 

そうでなければ老朽化した公会堂に15億円もの改修費を投入し、毎年、維持管理費と公債費返還で7~8000万円を支出して行く事への市民の理解は、到底得ることは出来ないでしょう。

公会堂に関して、単に存続の方針が決定しただけで、中身が全く見えない現状においては、本陳情が求めている文化財的価値が損なわれない改修という点で十分な審査が出来ません。 

50000人にも及ぶ署名を添えられた公会堂の陳情審査に対し、議員として、議会として、責任ある議論をすべきであります。 全国に、もっと言えば世界に誇れる米子の宝である公会堂の価値を、議会も当局も再確認し、多くの市民が共有してこそ次世代に繋げていく意義があるのだと思います。
 
公会堂のアンケート結果を見ても、20代~30代の認知度は特に低く、将来世代にとって負の遺産にしない為にも、われわれ議会はこの問題に真摯に向き合い、更に議論を重ねる必要があると考えます。 これらの理由から本陳情の継続審査を主張するものであります。 

最後に、議員の皆様のご理解をお願い申し上げまして、私の討論を終わります。




全員協議会報告

21日の予算審査特別委員会の終了後、全員協議会が開催され、当局から図書館・美術館基本設計の発注方法と整備スケジュールについて報告があった。 これは先の経済教育委員会でプロポーザル方式の問題を指摘した事に対して、当局からの回答ではあったが、残念ながらブレ続ける姿勢に一貫した政策理念は感じられない。

発注方法は予定通り指名競争入札としたが、基本設計の作成過程で新たに設置する基本設計市民懇談会の意見・提案等を受け基本設計に反映させる事を入札条件に付している。 具体的には設計期間中にパブリックコメントやタウンミーティングを実施し、更に公共事業評価も実施する計画になっていて、その後、設計を中断して市民懇談会の意見・要望を聴いた上で、設計を再開するスケジュールになっている。 その結果、当初5ヶ月の予定であった設計期間が8ヶ月に延長されている。

以下、私の見解を述べたい。

1、幅広い市民の声を基本設計に反映するとの事だが、図書館。美術館整備事業は伯耆の国文化創造計画にも位置づけられた合併時の重要課題であり、中心市街地活性化基本計画の重点事業で、更に先の市長選挙の緊急の重点施策である。 

この様な市政の中心に据えた大事業である以上、今までの長い期間に亘って十分に市民の声を聞き取った上で事業化されているはずである。 そうでなければ数々の主要施策に位置づけられた根拠が無くなる。 

今当局に強く求められている事は、今更ながらに発注方法を検討したり、市民の声を聞き取る事では無く、数々の市民要望でもあった通り、従来の手続きに則って速やかに事業を実施する事である。

2、基本設計が完了しない段階での公共事業評価は、特に専門的評価が困難になり、評価自体の意義が大きく損なわれる。 しかも,今議会の図書館・美術館基本設計について、ある議員の質問に対し、基本設計が完了して、実施設計に入る前に実施するのが公共事業評価の手順であり、基本設計が無い段階では適正な評価は出来ないと答弁している。

その時は適切な答弁だと聞いていたが、この度示された工程では、基本設計完了前での実施となっており、その点を質問したら、今度は堂々と評価可能と答弁をした。 今では珍しくも無くなったが、当局の答弁の不一致は不必要な混乱を招き、如いては市政不信に繋がる大きな問題だと思う。

3,今回の変則的な手続きによって事業完了が遅延する。 仮に図書館・美術館基本設計を予定通り5ヶ月の工期で実施するならば、23年度の当初予算でも供用開始時期は変わらないので、この度の債務負担行為の意義が薄れ、上程理由と矛盾する。 

以上を総合的に考えれば、今回示された基本設計の工程は、その効果より悪影響が懸念され、円滑な事業実施の観点から、大きな疑問を抱くのである。 

経済教育常任委員会が紛糾

16日に開かれた経済教育委員会は、公会堂の陳情審査や図書館・美術館予算、或は教育委員会所管施設の指定管理や東山屋内プールや競技場整備問題等、多くの審査項目があり、通常であれば2~3時間程度で終わる委員会が激論を交わしながら7時過ぎまでかかる事になった。

委員会での私の主な質問や指摘は以下の通りである。

1、米子市公会堂の存続と早期改修を求める陳情について、私は単に当局が存続の方針を出しただけで、内容が不明確な現状において賛否を決することは、議員として責任ある行動だとは思わない。 存続の市民合意を得る為には、特に費用対効果の説明責任を果たす必要があり、努力を重ねる姿勢が重要だと考える。 以上の観点から下記の質問をした。

①陳情では、公会堂は文化財的価値の高いホールとし、改修に当たってはその価値を損なわないように強く求めているが、市長は最低限の改修費に抑える旨の本会議答弁をしている。 また私の質問に対し、改修に当たっては出来るだけ意匠には配慮するとも答弁しているが、耐震改修の基本的な考え方を確認する。

②報告書によると、文化財的価値では、重文指定は否定的であるが、登録有形文化財の指定は可能とし、建築史的価値は高いと評価している。 しかし今の補強計画ではホール正面に耐震壁が必要となり、意匠的には問題があり、更に避難所施設とすれば、ホール棟両側面のタイル張り部の影響等、より深刻である。 存続後の付加価値を高めるためにも特に外観は守るべきで、耐震補強設計時には、文化庁と充分に協議して意向を踏まえた補強計画にするべきだと考えるが、見解を聞く。

③公会堂の存続はそれ自体が目的では無く、存続させることで如何に活性化に繋げるかが目的である。 多額な改修費を掛ける以上、それに見合う効果や付加価値が求められており、文化財的価値を損なわない点は重要な部分である。 単に存続の方針が決定しただけで、中身が見えない現状において、本陳情が求めている文化財的価値が損なわれない改修という点では十分な審査が出来ない。 大きな問題に発展した公会堂の陳情審査に対し、議会としては責任ある議論をすべきであり、この点において継続を主張する。

2、東山陸上競技場改修事業について、昨年の7月定例会で国の補助を活用し合併特例債を充当すれば、市の負担は軽減され財政に及ぼす影響から考えても実施可能だと考えるが、検討してみてはどうかと強く要望した。 その時の答弁は財源において否定的な見解を示し、議論以前の問題と一蹴されたが、後の9月定例会の答弁では指摘どおりの財源確保は可能とし、様々な角度から調査研究するとした。

以来1年が経過したが、当局において調査研究の報告が無いまま、今回のトラック改修だけの設計予算案が計上されたので、今後の整備方針に関して下記の質問をした。

①東山陸上競技場の大規模改修と周辺の環境整備を求める陳情が、25000人の署名を添えて、昨年趣旨採択されている。 本会議や委員会で、国の補助要件を満たし、合併特例債も充当できるとして、事業化に関しては様々な角度からの検討が必要と答弁しているが、どの様な検討がされたのか。

②陳情ではJリーグ対応の改修規模を求めているが、Jリーグ参入が決定した今日においては、プロチームのフランチャイズとして試合が開催されるかどうかは、米子市に与える経済効果や教育効果等、多岐に亘る。 スクラップアンドビルドのビルド施策が限られる中、今後の検討課題だと考えるが見解を聞く。

3、東山屋内プールの使用停止について、この度の屋内プール屋根の耐久調査報告によると、空調設備が無い為、室内に多量の結露が発生し、屋根の鉄骨部全域に甚大な影響が出ているとあり、これを受けて米子市は23年度から使用停止にして改修に入るとの事である。 これに対し利用者団体等は工事期間は仕方ないにせよ、設計期間中は使用延長してもらえないかとの要望が議員にも寄せられている。 

もともと県の施設が米子市に移管されたものだが、屋内プールで空調設備が無いのは異例であり、夏場はサウナ状態で、冬場は極寒と言う劣悪な環境でありながら、唯一の施設の為、我慢して使用してきた利用者・団体のご苦労を思うと、もっと早い段階で県と協議して適切な維持改修に努めるべきであったと思う。

以上の観点から、下記の質問をした。

①23年度から使用停止の予定と聞くが、ここに至るまでの経緯と原因はどの様に考えているのか、確認する。

②以前にも同様な実態調査を実施したと聞くが、比較検討はどの様になっているのか。

③天井材の落下防止シートが設置されているが、どの程度の機能が有るのか。

④利用者団体から改修工事までの使用延長を望む声を聞くが、公会堂の使用延長の実例も有る中で、再度、利用者団体との調整を図るべきと考えるが、見解を聞く。

3、米子市山陰歴史観の指定管理者の指定について、山陰歴史観は昭和5年に旧庁舎として竣工し、市指定文化財にも指定されている県内屈指の歴史的建造物である。 合併時の文化創造計画にも位置けられ、当初の改修予定は、20年度~23年度が計画されていたが、近年の財政状況により未実施のまま今日に至っている。

この様な中、新たに10年間の指定管理が出されているが、当然、今後の改修方針と施設のあり方を定めなければいけないと思うが、明快な方針が定まっていない。 米子市の貴重な財産であり、早急に今後の利活用策を検討する時期にあるとの認識から、以下質問した。

①山陰歴史観の経緯と概要について聞く。

②平成11年に実施された耐震調査の結果について、所見を聞く。

③指定期間が10年で設定されているが、その理由を聞く。

④平成18年の新総合計画に山陰歴史館の耐震補強と設備改修が盛り込まれ、翌19年の文化創造計画において、改修の事業期間は平成20年度から23年度とされている。 合併特例債の期限が迫る中、有利な財源確保の観点からも、早急な事業実施の検討が必要だと考えるが、見解を聞く。 

4、図書館・美術館整備事業の債務負担行為について、この点に関しては予算審査特別委員会の総括質疑で確認したので、委員会ではプロポーザル方式の問題点に集中して質問をした。

図書館・美術館整備事業は、図書館の増築があるが、主に既存建物の設備の改修や耐震補強、バリアフリー化等であり、既存建物とのバランスを考慮すれば、提案部分は限られる点や、判定会の設置等の実務上の問題点があり、時間も経費も余分に掛かる点、或は地元業者で十分対応できる物件を全国公募する政策的根拠等々、到底現実的な提案とは言えない。 以上の観点から下記の質問をした。

①可決された場合、早急に対応し1月早々の発注を予定したいとの答弁であったが、予算審査の総括質疑において、ポロポーザル方式の提案に対し、当局答弁が必ずしも明快では無かった。 ポロポーザル方式の一般的な実施期間や提案部分が限定的な点等考慮すれば、現実的では無いと考えるが、見解を聞く

図書館・美術館基本設計で激論

12月定例会に上程されている図書館美術館整備事業の債務負担行為について、予算委員会の総括質疑で質問したのは私だけだった。 この予算案は先の9月定例会の付帯決議により執行が保留されているもので、ブログ批判に始まった議会のドタバタ劇の根本問題である。 

ここでお互いの立場で議論を尽くすのが議員・議会の職責であり、本会議以外の場での批判やマスコミを使って自己主張する姿勢は、到底市民の理解を得るものではないし、如いては議会不要論に繋がる元凶だと思う。

この度の予算審査の総括質疑で、図書館・美術館基本設計の発注方法に関して、ある議員からプロポーザル方式の提案・要望があった。 議員いわく 「この設計は、専門性が求められるので地元設計事務所で十分に対応できない。 従ってプロポーザル方式で全国に公募し、より技術力の高い業者を選定したほうが良い」 との主張である。

これに対し当局は、「考えていない」 と建設部長が答弁し、教育委員会事務局長も同様の答弁をしたが、後日の特別委員会でも別の議員から、再度プロポーザル方式の要望があり、教育委員会事務局長が検討するかのごとき答弁をした。 

そもそもこの件の所管は常任委員会の経済教育委員会であり、特別委員会で議論するのもいかがなものかと思ったが、私は経済教育委員会の委員なので、後の委員会で徹底r的に議論することに決めた。

私は今回の図書館・美術館基本設計でのプロポーザル方式は、様々な点で実施するのは無理だと考えている。 以下その理由を述べる事にする。

1、今回の債務負担行為の上程理由は、一日でも早く事業実施する為の手続きで、可決されれば1月早々にも発注したいとの説明がされている。 仮に今定例会の議決後、プロポーザルの手続きをしようとすれば、最低でも3~4ヶ月程度の期間が必要となる為、今回の債務負担行為の上程理由が無くなる点。

2、図書館・美術館整備事業の原形予算は、当初予算と積算基準の見直しによる不足額の補正予算で構成されており、もともと競争入札の予定だったので、プロポーザル方式を想定した予算にはなっていない。 そして今回の債務負担行為の限度額は,その原形予算と全く同額である為、プロポーザル方式に変更すれば限度額の設定根拠が無くなる点。

この2点だけでも今回の債務負担行為を議会が可決する理由が消滅する。

加えて、提案議員によれば、地元設計事務所では優秀な設計は困難との見解だが、失礼極まりない認識だと言える。 当然の事ながら地元業者で十二分に対応できるのは言うまでも無い。




プロフィール



野坂道明(のざかみちあき)
昭和32年4月9日生

議員履歴
■鳥取県議会議員(2015-)
■米子市議会議員(2006-2014)
■鳥取県西部広域行政管理組合議会(2010-2014)

学 歴
昭和45年 米子市立加茂小卒
昭和48年 米子市立第4中卒
昭和51年 烏取県立境高卒
昭和56年 帝京大学経済学部卒

経 歴
■元(財)とっとりコンベンションビューロー西部地区企画運営委員会委員長(理事)
■元(社)米子法人会青年部会副部会長
■元米子商工会議所青年部会長
■米子市消防団河崎分団員
■河崎校区自治連合会顧問
■河崎公民館運営委員会顧問
■NPO法人やまつみスポーツクラブ顧問

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