4月の市長選挙後、初となる6月定例会も代表質問、関連質問、委員会審査等、全ての日程を終えた。 なんと言っても今回の議会で注目すべき点は、約66億円の補正予算が成立した事だと思う。 耐震化事業費20億円を含む公共事業費は40億円を超える規模となった。 財源の殆どは国の緊急経済対策の補助金、交付金等で、地方の負担は僅かな物なのだが、いくら量を確保しても、発注方法や入札制度等、質の改善を図らなければ、真に地方の活性化には貢献しない。 そこで今議会での議論を踏まえ、幾つかの問題を抽出し、私の考えを述べてみたい。

初めに、発注、入札制度の見直しについては、私の質問への答弁で、「総合評価入札に於ける受注減点方式の導入は、検討段階に入った」とし、最低制限価格の計算式の見直しについては、「長崎県の取り組みも参考にしながら研究する」との考えを示した。 前議会までは、「現段階では考えていない」との否定的な答弁であったが、見直しに向けて積極的な姿勢を示した点は、評価に値すると思う。

次に、年度末の完成検査業務の体制強化については、私の指摘に対し「完了検査が集中する年度末は、課長級技術職を主体として、検査室を補佐すると共に、工期の設定も年度末ではなく、余裕を持った設定にする」との答弁があり、改善が図られることになった。

次に、学校施設の耐震化問題については、何よりも児童の安心、安全の確保の観点から、喫緊の課題であるのは言うまでもないが、また同時に、地域の経済対策に資するという観点も忘れてはならない。 この点に於いて、今までの米子市の対応は、県の様に補強工事の工法を、地元業者で対応できる在来工法を前提にするのではなく、メーカー施工を容認しているため、いま現在、地元業者が参入しずらい環境にあると言える。 経済対策の観点から言えば、地元業者が受注する事で、資金が地域に環流し、経済効果が高まるのであり、発注者側としては、景気後退の中、最大限考慮する必要がある。 今議会で、今後は可能な限り在来工法を採用するとの方針が示された。 これで耐震補強工事も、地元業者が受注出来る環境が整った。 この事は大いに評価すべきと考える。

次に、米子駅の下りエスカレーター設置を求める陳情の採決について、私の考えを述べたいと思う。 米子市に於いても、平成22年度の完成を目指し、整備区域のバリアフリー化が進められているが、米子市の責任範囲は駅周辺の歩道等であり、米子駅はあくまでもJRが事業主体である。 そもそも駅のバリアフリー化は、エレベーターが基本であり、障がい者団体等の要望も、当然の事ながらエレベーター設置を求めている。 したがって駅のエスカレーターは、あくまでも利便設備であり、この度の米子駅のバリアフリー化とは、まったく別な話である。 しかもエレベーター設置の国の補助条件は、一日10000人以上の乗降客数が必要で、現在、8000人の米子駅は本来対象外である。 この様な厳しい状況の中、米子市、JR、県、国を交えた関係者の並々ならぬ努力の成果が、上りエスカレーター設置と言う事だったと認識している。 陳情者の気持ちは理解するが、この様な経緯を踏まえ、関係者の立場でもある市議会議員が、今まで何ら行動することもなく、今この時点で下りエスカレーターを求める陳情に賛成することは、やっと合意にこぎ着けた関係者の努力を、根底から否定する行為と見られてもしかたない。 議員たるもの知らなかったではすまされないのである。今は米子駅を利用する全ての人のためにも、特に高齢者や障害を持つ人のためにも、バリアフリーの現計画を粛々と実行し、下りエスカレーターの設置に関しては、将来の南北一体化計画の事業化の中で、実現に向けて段階的に整備すべきと考える。

次に、今議会に上程された、米子市景観条例の制定に対して、会派「未来」から,危険家屋等の除去が可能な強制力を持つ制度の検討を求めて附帯決議が提出された。 建設環境委員会の審査に於いて、私は危険家屋の撤去に関しては、建築基準法や道路法など適用する法律、制度があるので現行法で十分対応出来る点、また景観条例に強制撤去と言う行政権を持たせることで、執行するにあたり、個人の財産権との調整をどうするのか等、議論すべき問題点は数多くある点などを指摘し、附帯決議には反対の意見を述べた。 委員会採決では共産党委員も反対に回り、賛成少数で否決されたが、再度、本会議で提出され、何故か委員会で反対した共産党委員の皆さんが、本会議では賛成に回ったのだが、採決した結果、附帯決議は否決された。 今回の事で私が意外に思ったのは、権力行使に対し、徹底的に個人の権利を擁護する立場を貫く共産党議員の皆さんが、強制撤去と言う行政権力に対し、すんなり認める立場をとったことである。 これも時代の変化なのか? 認識を新たにしたところである。